うつの患者の数は、その他の、心の問題を抱える人た
 ちを全部合わせた数よりも多いのです。大半のアメリカ人は一生のある時期、深刻 なうつを患います。そして現在、アメリカ人の二○人に一人がうつという診断を受けているのです。
 もちろんもっと多くの人がうっ状態にありますが、治療や援助を受けていません。ある推定によれば、アメリカの十八歳から七十四歳の人口のうち、二○○○万人がうつ状態だと言われています。うつは自殺のおもな原因であり、事実、うつを患った人の一五%が自殺を図ると言われています。うつは今日、アメリカの死因の一○番目にあげられ、大学生の問では死因の二番目にあがっています。うつは男性よりも女性に二倍多く見られ、また経済的にクラスが高い人々には三倍多く見られます。たしかにお金で幸福は買えないことを、この数字ははっきりと証明しています.

うつは普通四十代、五十代で発症しますが、幼児期から高齢者までストレスが多い時期にはいつでもおこり得ます。
 うつはあいまいな言葉です。一般の人たちはちょっとした気分の浮き沈みから、精神病までを含めてこの言葉を使っています。私たちはみなこのなかのどこかに入るわけで、うつの程度と幸福感は一日のうちでも時間により、また日により、ある程度行き来します。精神科医の立場では、いわゆる「臨床的なうっ」におちいっている人(以下、単にうつと表記する)、つまりうつ症状ゆえに生理機能上の症候が現れている人たちを治療します。
 うつは旧約聖書の時代から語られてきました。聖書にはョブ、モーゼ、エリヤ、ダビデ、ジェレミアなどのうつ的な症状が記録されています。最初にこの症状が記録されて以来、その状態は現在までずっと変わっていません。
 さて、ではどんな人がうつを患うのでしょう?
実は、人生のある時期、ほとんどだれもがうつを経験するのです。
しかし、深刻なうっを患っている人でも、何とかつらさから抜け出る道、希望はあるというのが私たちの強い主張です。うつは普通、正しい治療と援助によって治ります。生理的理由によっておこるうつでさえも、治るところまではいかなくても、大半は正しい処方薬とカウンセリングでコントロールできます。